ふるーと・フルート
■初めての経験「オペラの忍び!?」
先月、新国立劇場で行われたオペラ「トスカ」に出演しました。美人歌手トスカに思いを寄せ、醜い嫉妬に燃える軍曹スカルピア。素晴らしく美しくて有名なアリアがいくつか含まれてはいますが、カヴァレリア・ルスティカーナの三角関係とは比べものにならないほど、
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いやらしくてネチネチしているストーリーなのに、当時大人気だったというのが少々疑問ではあります・・・
第2幕の始めにスカルピアが部屋の窓を開け、宮廷で演奏されている音楽を聴く場面があります。
実際に窓の向こうから音楽が聞こえてくるような効果を出すため、作曲者のプッチーニは舞台裏にバンダと呼ばれる楽隊を待機させています。今回のバンダはフルート、ヴィオラ、ハープで短いガヴォットを演奏するものでした。
ハープ奏者はオケとは別に舞台裏に楽器とともに待機し、フルートとヴィオラはオーケストラのメンバーが移動して演奏します。
第二幕が始める前に、楽屋前の廊下を抜け階段を上り奧の舞台裏へ。そこにはピットの指揮者が見えるよう大きなモニターが設置され、そのモニターを見ながら副指揮者がバンダを指揮します。
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1分ほどの短いガヴォットが終わった途端、先を演奏するために、すぐにピットへ戻らなければなりません。
ピットのドアを開けると、オーケストラが熱演中。私はお客様に気づかれないよう、まるで時代劇に出てくる忍びの者のように、背を低くしてオーボエの脇にじっと座り込んで待機します。そしてオーボエとフルートが同時に休む数小節をねらって彼らと譜面台の間を縫って素早く入り、自分の席に着き、何事もなかったようにそのままオーケストラに加わり先を吹き始めるのです。